分離脳の手術を受けた患者が椅子に座っている状態で、右脳(左耳)に対して「歩き出しなさい」という指示を与えると、患者は椅子を後ろにひき、その場から動こうとするという。この時、左脳(右耳)に「あなたは何をしているのですか」という質問をすると、やはり辻褄を合わせるような一応、筋の通った説明をでっちあげるらしい。「喉の渇きを感じたので、飲み物を取りにいこうとした」「足がつったので動かそうと思った」といった具合である。これは、たまたま一人の患者の場合がそうだったというわけではない。左脳が話をでっちあげる現象が見られることは、それぞれ異なった状況に置かれた100人以上の患者ではっきりと確認された。

デイビッド・J・リンデン 『つぎはぎだらけの脳と心』